スタートアップ向けの職務発明等取扱規程のひな型を有志で作成しました。ご活用ください。
スタートアップ向け職務発明規程ひな型
職務発明等取扱規程
第1条 (目的)
本規程は、会社の従業者等が創作した発明等の取扱い、権利の帰属及び相当の利益について定めることにより、従業者等の創作を奨励し、もって会社の事業の発展に寄与することを目的とする。
第2条 (定義)
本規程において、次の各号の用語の意味は、当該各号に定めるところによる。
一 「発明等」とは、日本国の特許法における発明、実用新案法における考案、意匠法における意匠、及びこれらに相当または類似するもので外国の法令に基づくものを総称していう。
二 「発明者等」とは、発明、考案、又は意匠を創作した者をいう。
三 「従業者等」とは、その名目又は期間を問わず、会社と雇用関係又はそれに準ずる関係にある者、及び会社の執行役員、取締役又はこれらに準ずる地位に就いている者をいう。
四 「共同発明等」とは、発明等のうち、複数の発明者等によってなされたものをいう。
五 「職務発明等」とは、その性質上会社が現在行っている又は将来行う予定がある業務範囲に属し、かつ、その発明等をするに至った行為が会社における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明等をいう。
六 「業務発明等」とは、職務発明等を除き、その性質上会社が現在行っている又は将来行う予定がある業務範囲に属する発明等をいう。
七 「特許等を受ける権利」とは、日本国の特許法における特許を受ける権利、実用新案法における実用新案登録を受ける権利、意匠法における意匠登録を受ける権利、及びこれらに相当または類似するもので外国の法令に基づくものを総称していう。
八 「特許出願等」とは、日本国の特許法における特許出願、実用新案法における実用新案登録出願、意匠法における意匠登録出願、及びこれらに相当または類似するもので外国の法令に基づくものを総称していう。
九 「特許権等」とは、日本国の特許法における特許権、実用新案法における実用新案権、意匠法における意匠権、及びこれらに相当または類似するもので外国の法令に基づくものを総称していう。
十 「秘匿職務発明等」とは、職務発明等のうち、会社が出願をせずに会社内で営業秘密又はノウハウとして秘匿することを決定したものをいう。
第3条 (届出)
発明等を創作した従業者等は、発明等の内容を速やかに会社に届け出るものとする。
第4条 (権利帰属)
会社は、発明等が完成した時に、職務発明等に係る特許等を受ける権利を取得する。
2 職務発明等が共同発明等である場合は、当該共同発明等を創作した従業者等の持分に応じた特許等を受ける権利を会社が取得する。
第5条 (決定及び承継)
第3条第1項の届出があった場合、職務発明等であるときは、会社は取得した職務発明等の特許出願等を行うか否かを決定する。
2 第3条第1項の届出があった場合、業務発明等であるときは、会社が発明者等と特段の合意をした場合を除き、会社は業務発明等に係る特許等を受ける権利を届出日に承継する。
第6条 (権利の処分)
会社が特許等を受ける権利を取得又は承継したときは、特許出願等、秘匿化、公知化、権利化、権利維持、実施、ライセンス、権利譲渡、権利放棄、特許出願等の取下げ、及びその他の一切の発明等の処分、並びに発明等に関するその他の権利の処分については、会社の判断するところによる。
第7条 (協力義務)
発明等に関与した従業者等は、会社の行う特許出願等、及びその他の特許権等の設定の登録を受けるために必要な措置に協力しなければならない。
第8条 (相当の利益)ver.1(スタンダード)
会社は、従業者等から取得した特許等を受ける権利に対して、次の各号に定める報償金を支払う。
一 特許出願等をした場合、出願報償金として以下の金員を支払う。ただし、ただし、分割出願に係る特許権等は除くものとし、日本国及び外国において複数の特許出願等が存在する場合であっても、最先のものに対して一回に限り支払うものとする。
区分 金額
特許出願 一万円
意匠登録出願 五千円
二 特許権等を取得した場合、登録報償金として以下の金員を支払う。ただし、分割出願、変更出願及び国内優先権主張出願に係る特許権等は除くものとし、日本国及び外国において複数の特許権等が存在する場合であっても、最先のものに対して一回に限り支払うものとする。
区分 金額
特許権 五万円
実用新案権 三万円
意匠権 三万円
三 特許権等に係る発明等が会社の実績に顕著に貢献をしたと会社が認めたときは、毎年度毎に一回、当該年度の実績報償金として、以下の金員を支払う。発明等の区分は、発明等の実施又は活用による利益、及び特許権等の貢献度等に基づき会社が決定する。
区分 金額
Sランク 百万円
Aランク 五十万円
Bランク 十万円
Cランク 五万円
2 共同発明等の場合は、寄与率に基づいて第1項各号の報償金を按分した上で、各従業者等に支払うものとする。
第8条 (相当の利益)ver.2(シンプル)
会社は、従業者等から取得した特許等を受ける権利に対して、次の各号に定める報奨金を支払う。
一 特許出願等をした場合、出願報奨金として以下の金員を支払う。ただし、分割出願、変更出願及び国内優先権主張出願に係る特許出願等は除くものとし、日本国及び外国において複数の特許出願等が存在する場合であっても、最先のものに対して一回に限り支払うものとする。
区分 金額
特許出願 五万円
実用新案登録出願 三万円
意匠登録出願 三万円
二 特許権等に係る発明等が会社の実績に顕著に貢献をしたと会社が認めたときは、毎年度毎に一回、当該年度の実績報奨金として、以下の金員を支払う。発明等の区分は、発明等の実施又は活用による利益、及び特許権等の貢献度等に基づき会社が決定する。
区分 金額
Sランク 百万円
Aランク 五十万円
Bランク 十万円
Cランク 五万円
2 共同発明等の場合は、寄与率に基づいて第1項各号の報奨金を按分した上で、各従業者等に支払うものとする。
第8条 (相当の利益)ver.3(エキスパート)
会社は、従業者等から取得した特許等を受ける権利に対して、次の各号に定める報奨金を支払う。
一 特許出願等をした場合、出願報奨金として以下の金員を支払う。ただし、ただし、分割出願に係る特許権等は除くものとし、日本国及び外国において複数の特許出願等が存在する場合であっても、最先のものに対して一回に限り支払うものとする。
区分 金額
特許出願 一万円
意匠登録出願 五千円
二 特許権等を取得した場合、登録報奨金として以下の金員を支払う。ただし、分割出願、変更出願及び国内優先権主張出願に係る特許権等は除くものとし、日本国及び外国において複数の特許権等が存在する場合であっても、最先のものに対して一回に限り支払うものとする。
区分 金額
特許権 五万円
実用新案権 三万円
意匠権 三万円
三 特許権等に係る発明等が会社の実績に顕著に貢献をしたと会社が認めたときは、毎年度毎に一回、当該年度の実績報奨金として、以下の算定基準に従って算定された金員を支払う。
((イ-ロ)×ハ×(1-ニ))+(ホ×(1-ニ))
イ 発明等の実施によって得られた売上の額
ロ 通常実施権による売上の額
ハ 発明等の仮想実施料率
ニ 会社の貢献率
ホ 第三者に実施権を許諾又は設定したこと、若しくは特許等を受ける権利又は特許権等を第三者に譲渡したこと等によって得られた利益の額
2 共同発明等の場合は、寄与率に基づいて第1項各号の報奨金を按分した上で、各従業者等に支払うものとする。
第9条 (支払手続)
出願報償金は、特許出願等をした日から一年以内に一括で支払うものとする。
2 登録報償金は、特許権等の登録番号が通知された日から一年以内に一括で支払うものとする。
3 実績報償金は、会社が発明等の区分を決定した日から一年以内に一括で支払うものとする。※標準(※出願/登録時のみのときは、本項を削除する)
3 実績報償金は、発明等が会社の実績に顕著に貢献した会社が認めた日が属する年度の年度内に支払うものとする。※算出版
第10条 (意見の申出)
発明者等は、職務発明等について特許等を受ける権利の取得に対する相当の利益の内容に意見があるときは、その内容について通知を受けた日から30日以内に、会社に対し意見の申出を行い、説明を求めることができる。
2 発明者等は、第8条第1項第三号の実績報奨金に代えて、その他の経済上の利益を受けることについて、会社に協議を求めることができる。
第11条 (秘匿職務発明等)
秘匿職務発明等のうち、特許権等の登録要件を具備しており、秘匿化して会社が実施することにより会社に独占的な利益を生じさせたと会社が認定したときは、会社は発明者等に対し、秘匿報償金として五万円を支払う。
2 共同発明等の場合は、寄与率に基づいて第1項の秘匿報償金を按分した上で、各従業者等に支払うものとする。
3 第1項の秘匿報償金は、第1項の認定の日から一年以内に一括で支払うものとする。
4 第10条の規定は、第1項の秘匿報償金の支払いについて準用する。
第12条 (制限行為)
発明等を創作した従業者等は、会社による明示的な許可を受けた後でなければ、発明等について公開をし、特許出願等をし、実施をし、実施権の設定又は許諾をし、又は特許等を受ける権利を第三者に譲渡してはならない。
第13条 (退職者の取扱)
従業者等が退職する場合、第8条第1項各号及び第11条第1項の各報償金について、会社は将来支払うべき金額を算定して退職時に一括して本人に支払う。ただし、各報償金の支払先又は連絡先が変更された場合であって、会社に通知がないことにより支払い不能となった場合はこの限りではない。
2 第8条第1項各号及び第11条第1項の各報償金を受ける権利を有する従業者等は、退職時に、退職後の支払先及び連絡先を会社に通知しなければならない。
第14条 (死亡時の取扱)
従業者等が死亡した場合、会社は、当該従業者等の法定相続人のうち第一順位の相続人に対して第8条第1項各号及び第11条第1項の各報償金を支払うものとする。
第15条 (出向者の取扱)
従業者等が出向期間中に創作した発明等の取扱いについては、会社と出向先との取決め及び会社と従業者等との間の契約に従うものとする。
第16条 (規程の開示)
会社は、本規程を常時開示し、従業者等が閲覧可能な状態におくものとする。
第17条 (規程の改定)
会社は、必要に応じて本規程を改定するものとする。
2 第8条から第11条のいずれかを改定する場合、会社は従業者等と協議を行うものとする。
附則
第1条 本規程は、〇〇年○○月○○日より施行する。
第2条 本規程は、施行日前に届け出られた発明等についても適用する。
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